更新日:2024年5月1日
5月は、竹内淑浩の《雨のつきやま》を紹介します。
「月替わりコレクション紹介」について
《雨のつきやま》
「佐久市立近代美術館 油井一二記念館」がある駒場公園に南側からきて、未舗装の駐車場から公園を眺めると、木立の中にかまぼこ型の白い彫刻を見ることができます。竹内淑浩の《雨のつきやま》です。
「長野県佐久大理石彫刻家シンポジウム」※は1989年(平成元)に南相木村立原高原を会場に始まり、1993年(平成5)の夏、この駒場公園南側の駐車場で第5回のシンポジウムは開催されました。芸術系の大学教授から20代の若手まで10人の彫刻家により、栗生から運ばれた大きな大理石から10作品が制作され、《雨のつきやま》はそのひとつです。
この年は、キノコ形の作品(斉藤 徹《うすずみのしたは》、酒井信次《長者の森》、佐善 圭《しあわせの木》)が多く見受けられました。制作した作家たちの、自然、環境、出会い、成長、願いといった言葉を聞くにつけ、佐久の環境に影響を受けた結果の作品群なのではないかと推察しています。
その中でも《雨のつきやま》は、特異といえるでしょう。
多くの作品は佐久大理石の質量を生かしつつ、それぞれの形を削りだしていますが、この作品は中心となる山の部分を比較的薄めに、板わさのかまぼこのように、スパッと切ってしまいました。そして断面を鏡面のように磨き、その鏡面を削って激しい雨を降らせました。悪天候なのに空には上弦の月が沈もうとしています。真夜中なのでしょうか。
この彫刻作品からは絵画的な表現を感じます。
南側から鑑賞した後は、北側からも見てください。山に降る雨は弱まり、満月が上ってきています。夜半のよい天気を想像させます。そして、本当の雨の日には、大理石の色彩を楽しむこともできます。
※『1 大理石彫刻シンポジウム』(1989年・第1回長野県佐久大理石彫刻シンポジウム実行委員会)によると第1回は「長野県佐久彫刻シンポジウム」となっている。彫刻シンポジウムは、彫刻家が一定期間、同じ場所で作品を公開制作する芸術活動で、彫刻家カール・プラントル(Karl Prantl・1923-2010)らによって提唱された。日本においては、1963年(昭和38)、神奈川県の真鶴半島で開催された「世界近代彫刻シンポジウム」が最初とされている。
今回紹介した《雨のつきやま》は、当美術館のある佐久市猿久保にある駒場公園に設置してあります。
毎週月曜日(休日の場合は開館)
展示替え期間(不定期)
年末年始期間(12月29日~1月3日)
ほか臨時休館することがあります。
午前9時30分~午後5時