このページの先頭です
このページの本文へ移動

JICAアフガニスタン所長 花里 信彦さんからのアフガニスタン便りNo7

更新日:2015年2月2日

(NO7:2010年9月)

花里 信彦氏

JICAアフガニスタン所長

佐久市志賀出身

アフガニスタン国会の下院議員選挙の投票が9月18日に行われました。

昨年の大統領選挙に続く大きな国政選挙です。大統領選挙は大きな不正やタリバンの攻撃による投票率の低下で正当性にかけるという評価だったのですが、今回の下院選挙も登録段階から不正の摘発や候補者同士の抗争、タリバンの警告・威嚇等大きな問題が発生していました。

大統領選挙では、登録者数より多い投票数がカウントされる地区がでたり、投票当日の投票所への攻撃や、投票の不正な繰り返しを避けるためにインクで黒く塗った市民の指をタリバンが「投票者は懲罰する」と見せしめのため切り落とすような事件が多発、また、候補者同士が相手の不正を誹謗中傷するなか、投票結果が正式に確定するまで3ヶ月もの時間がかかりました。その間に、選挙活動に協力した国連の宿舎がタリバンに襲撃されて国連スタッフが殺される等の悲惨な事件が発生しました。
今回の選挙結果は10月下旬に確定する予定です。が、今後も候補者同士の抗争(投票後でも相手が死ねば自分が選ばれるのです)やアメリカのコーラン焼却事件に端を発する反米デモの動きにタリバン等の反政府勢力が乗じて、治安が悪化していくのが懸念されます。
選挙期間中はタリバンや候補者同士の争いで10人以上が殺され、18日の投票日にはタリバンの投票所攻撃で14人が殺されました。19日には18日に誘拐されていた選挙管理委員のうち3名の遺体が発見されました。
この被害状況を見て「あー、被害が少なくて良かった。」と思ってしまう私はすでに精神的におかしくなっているのかもしれません。しかし、131箇所の投票所がタリバンに攻撃され、死者が17名(負傷者は楽に100名を越えますが)というのは奇跡的です。去年の大統領選挙では50名あまりが殺されました。
もとより、ISAF(国際部隊)の誤爆で殺される民間人の数と比べたらほんのわずかな数なのです。

JICAは選挙・投票にかかる危険を避けるため、16日から19日を自宅待機・勤務としました。宿舎からは一歩も出ず(庭もロケット弾が着弾する危険性があるので禁止です)、1日に何時間もつながらないインターネットを使って仕事をするのですが、これは非常にストレスがたまる仕事です。和平ジルガ、カブール国際会合、選挙と、今回で今年3回目の自宅待機ですが、外からの情報はインターネット、生放送のBBCとアルジャジーラ、JICAの安全対策アドバイザーが軍と警察から集める情報、大使館からの危険情報、これだけの情報源で、目に見えない脅威状況を察知し判断しなければいけません。これが一番精神を苛み、心を暗く重くする業務となります。
今回もJICA関係者に被害が及ぶことなくほっとしています。19日の18時に情報を整理し、安全を確認、20日からの勤務場所での仕事の再開を決定しました。
18日の夕方、インターネットがつながらなくて苛々して机に向かっていると「ズーン」という腹に響く衝撃。地震の揺れとは明らかに違います。あわてて確認をしますが、なかなか状況がつかめません。15分くらいかかって家から数百メーター離れた地区にロケット弾が着弾したことがわかりました。人的被害はなし。ロケット弾は結構頻繁に落ちるのですが、なかなか狙ったところには行かないようで、巻き込まれるのは怖いですが、日本で自動車事故にあう確率よりは低いと言われています。

去る9月9日は「マスード将軍記念日」で国民の祝日でした。
マスード将軍とはアフガニスタンの英雄と慕われているアームド・シャー・マスード将軍です。カブール北部のパンジシール渓谷を拠点にし、1979年からのソ連軍の侵攻に立ち向かいこれを打ち倒し「パンジシールのライオン」とその名を世界に高め、その後も台頭するタリバンに対し、そのテロリズムを世界に拡散させないために最高司令官として戦い続けた勇士です。私がアフガニスタンの人の中で一番尊敬する人です。

そのマスード将軍は2001年9月9日、あの9.11事件の2日前に新聞記者のインタビューを装ったテロリストの自爆テロで他界しました。
9.11の動きとも連動していたといわれています。
マスード将軍の肖像は、アメリカ大使館の広大な敷地の前にあるマスードスクエア【写真1】に掲げられ国民に慕われています。

マスード将軍の記念塔を写真に撮っていると、ISAFの装甲車が割り込んできました【写真 2】。
あわてて離れる様に運転手に指示しましたが渋滞で動きません。
軍の車両は攻撃の対象になりやすいので決して近づいてはいけないことになっていますが、向こうから近づいてこられるとどうしようもありません。

軍の車両はとても厄介なのですが、それよりも不気味なのかISAFの監視飛行船【写真 3】です。
いつもカブール上空に浮かび市内の情報を収集しています。反政府勢力の監視といわれていますが、おそらく我々も監視対象です。空からの画像による監視だけではなく、電話も聞かれているというのは映画の中の話ではありません。嫌な感じですね。

さて、10月には佐久にお邪魔します。健康診断のための一時帰国を利用して10月3日の「国際交流フェスティバル in 佐久」でお話しさせていただきます。アフガニスタンのこと、国際協力に興味がある方は是非会場へ足を運んで下さい。お待ちしています。

西の山脈に雪が積もり、突然の秋がやってきたカブールにて(今朝の気温は10℃)
9月20日 花里 信彦

JICAホームページ

お問い合わせ

企画部 移住交流推進課
電話:0267-62-3283
ファックス:0267-63-3313

お問い合わせはこちらから

本文ここまで

サブナビゲーションここから
ページの先頭へ