JICA 輿石あけみさんのウルグアイ便り vol.1
更新日:2015年2月2日
輿石あけみさん (佐久市鍛冶屋出身)
佐久市の皆さん、はじめまして。JICA(独立法人国際協力機構)のシニアボランティアとして、10月から南米ウルグアイのリベラ市に派遣されている輿石あけみです。
皆さんは、ウルグアイと言う国をご存知ですか?ウルグアイは人口330万人の小さな国で、面積は日本の半分です。北と東はブラジル、西はアルゼンチンと国境を接しており、南は大西洋に面しています。
ウルグアイは19の県によって構成されています。私が派遣されたのは、リベラというブラジルと国境を接する県です。今日は、その県都リベラ市についてお話しましょう。
国境の町リベラ
ウルグアイの首都モンテビデオから東北に500km、地平線の彼方に広がる大平原を両側に見て、まっすぐ伸びた高速道路をひた走ること6時間、ブラジルと国境を接するリベラ市に着く。
リベラ県の人口は約10万人、その9割が県都リベラ市に住んでいる。この町は、他に類を見ない不思議な、そして興味深い町だ。他の中南米諸国と同じように町の中心に公園、それを囲んで、県庁や銀行など主要なオフィスが並んでいるが、そこから北にまっすぐ伸びるメインストリートを行くと、また大きな公園にぶつかる。55,000平方メートルのその公園は、真中で二つに分かれ、その一方はウルグアイ、もう一方はブラジルなのである。その中心には、高さ15mの三角形のオベリスクが立っており、その両側にはそれぞれの国旗がはためいている。この公園は、第2次世界大戦の真っ只中、1943年に建設された。
オベリスクの上部にはそれぞれの国に向けて時計が設置されていて、その国の時刻に合わせているはずなのだが、両方とも止まっていた。
公園を2分するオベリスク
ウルグアイ側の時計
ブラジル側の時計
リベラがブラジルと接する250kmに渡る国境線には、その目印となる塚のような物がほぼ200~300メートル間隔で続いている。ここには柵も無ければ監視する兵士の姿も無い。両国の人々は、自分の庭を横切るようにその想像上の国境を横切って自由に行き来する。この場所を案内してくれたウルグアイ人は「国境は両国の人々を繋ぎこそすれ、離れ離れにすることはない。」と話してくれた。“Frontera de la Paz(平和な国境)”と呼ばれる所以だろうか。国境の町ではウルグアイ人とブラジル人が結婚する事も、一方の国に住んで、日々国境を越えて職場に行くことも珍しくない。子供達は両国の言葉を聴いて育つ。ここではポルトニョールという、スペイン語とポルトガル語が微妙にが混じりあった言語が普通に話され、学校では、スペイン語とポルトガル語のバイリンガル教育がなされる。
国境を示す塚:右手側がウルグアイ、左手側がブラジル
自分の庭のように国境を越える
前述した国境の公園 “Parque Internacional”から町の中心地に伸びたメインストリ-トの両側にはDuty Free Shop が並び、ブランド物の洋品、香水や化粧品、靴、酒類、家電、カメラやPCとありとあらゆる物が売られている。Duty Freeといっても、実際にどの程度安いのか、まだ私には良く解らないが、地元の人に聞くと、ブランド品や輸入品は品質もよく、安いと言う。この町には、週末や祝日になるとブラジル側からどっと人が押し寄せ、この通りは人で溢れる。響きの良いポルトガル語が飛び交い、スペイン語と混じりあう。人々はここで山のような買い物をし、Parillada(肉やソーセージなどの網焼き) をワインやビールと一緒に楽しむ。
メインストリートに並ぶ免税店
土曜の午後食事を楽しむ人々
このDuty Free Shopは、ウルグアイ側にしかない。不思議に思って尋ねると、ウルグアイよりブラジルの方がずっと豊かだからだという答えが返ってきた。免税店だから、普通のウルグアイ人はここでの買い物は出来ない。ブラジル側には、“300”と言う大きなスーパーがある。ウルグアイ側より品物が豊富で安いらしく、ウルグアイ人はここに日常品を買いに行く。車やガソリンもブラジル側の方が安いらしい。面白いのは、この公園の中でさえ想像上の国境の両側では、様相が全く異なる。ウルグアイ側は、ブラジルからの観光客目当てに、中国製であろう安っぽい商品を並べる露天商が軒を並べている。一方のブラジル側は、革製品などの民芸品を並べた5軒ほどの露店と、なぜかホットドックを売る車が並んでいる。ウルグアイ側から公園に憩いに来る人達が安いホットドックを買うのだろうか。
ウルグアイ側
ブラジル側
国境を挟んだどちら側でもポルトガル語とスペイン語の両方が通じる。店員やレストランのボーイは、客を見てどちらかの言語で応対する。私達日本人は、日系ブラジル人と見られるらしく、ポルトガル語で話しかけられる。商品の値段もウルグアイペソとブラジルレアルで表示されていて、どちらでも支払いが出来る。Duty Free Shopでは、もちろん米ドルが使える。
こんな不思議な、そして平和な町で私達の活動が始まりました。これから徐々に活動の様子もお伝えしていきます。
平成24年11月1日 夏に向かって暑くなって来たリベラ市より
シニアボランティア 平成24年度二次隊 渉外促進
輿石 あけみ
