JICA 輿石あけみさんのウルグアイ便り vol.2
更新日:2015年2月2日
輿石あけみさん (佐久市鍛冶屋出身)
佐久市の皆さん、こんにちは。日本は日増しに寒くなっているようですが、お元気ですか?今日は、ウルグアイのリベラ市に派遣されたボランティアの活動の一部をご紹介します。
花き栽培に挑戦する女性達
ごく最近、ウルグアイの大統領、ホセ・ムヒカ氏が、リオデジャネイロの環境サミットで行った、環境に関するというより、世界の先進国の政治を告発する素晴らしい演説を知った。日本では殆ど問題にもされなかったようだから、もし興味がある方は、こちらをごらん頂きたい。http://hana.bi/2012/07/mujica-speech-nihongo/(外部サイト)(日本語の翻訳付)
10月上旬にウルグアイに着き、一週間ほどの研修を終えて、赴任地であるリベラ市に移ってしばらくは、私たちの活動に関係ある場所を色々案内された。私達の配属先は、リベラ県庁保健・衛生・環境局である。主に案内されたのは、廃棄物処理場、汚水処理場、ウルグアイの原生林保護の為の植林用苗育成場等であった。その見学の中で私が強く感じたのは、「この国はかなり環境対策に力を入れているな!」という事であった。それがこの大統領の演説で裏づけされた。
リベラ県では、10年以上前から、廃棄物の分別とリサイクルに取り組んできた。その一環として、家庭や公園で剪定される木の枝や刈り取られた草を利用して堆肥を作り、それを使って野菜や花を栽培すると言うプロジェクトを一年ほど前から展開している。多くの開発途上国では、貧しい人達はごみの山を漁って、売れるものを探し、それを生活の糧としている。リベラ県庁は、それらの人々の生活向上を支援する為このプロジェクトを立ち上げた。現在NGOを通じて組織された7名(男性1名、女性6名)がこれに取り組んでいる。花き栽培指導ボランティアの活動の一つは、この堆肥作りとそれを使っての野菜と花の有機栽培指導である。
私達がやってくる前まで、堆肥作りは、全く経験のない県庁の若い技術者達(一人は生物学専攻、一人は化学専攻、一人は獣医)が試行錯誤しながら作っていた。ビニールハウスの中で作っている野菜や花は一応農業関係の技術者や公園などを管理している造園技術者が指導していたが、実際に栽培しているのは、その分野には未経験の女性達で、これも手探り状態だったようだ。
私達が着いた頃は、堆肥の山が10くらいあり、一つのビニールハウスではレタスや夏菜が採れて、女性たちはそれを細々と売っていた。もう一つのハウスは、半分に野菜、残りの半分にスタ-チスやへリクリサム(貝殻草)を栽培していたが、まだ蕾も出ていない状態で、いつ売れるようになるのだろうか?と心細い限りだった。また、マリーゴールドやロベリア、千日紅等の苗も作っていて、これらは、野菜と一緒に各家庭を回って売っているということだった。
花き栽培指導のボランティアは、さすがこの道40年のベテラン、堆肥の山を点検して、3つの山が既に堆肥を通り越して土に化している事を即座に判断してしまった。私も知らなかった事なのだが、当然のことながら、有機物は最終的に土に帰るのだ。そして、栽培している野菜や花についても、花の支柱の立て方、苗床の作り方、種の播き方、苗の育て方、ポットへの植え替え方、トマトのわき芽のとり方等、次々と教えていった。貧しい人達の限られた予算で賄われているこのプロジェクト、資材がないと知っても、農業改良普及員や農業大学校、花き試験場の職員を長く経験した彼のアイディアは尽きるところを知らない。支柱にする物がないといえば、竹林から竹を切り、囲いを作る材料がないといえば、また竹を切り、種や新芽をつつきに来る鳥よけにも糸を張り、笹をかぶせ、苗を植えて売るポットがないといえば、新聞紙を使えと、次から次へと代替案が出てくるのには、ただただ敬服してしまう。
11月12日、彼女らにとって記念すべき日、初めて彼女達の作った花を切るときが来た。花き栽培ボランティアの指導の下、慣れない手付きで花を切り、余計な枝や葉を払って、束ねていく。彼女たちにとっては初めての切花の収穫。ボランティアの指導なしでは、どの花をどう切って良いのかさえわからなかった。
その日の収穫は、へリクリサムの花20個ほどの束が2束、スターチス10本ほどの束が3束と、ごく少ないものであったが、一緒に働くNGOの女性が母親へのプレゼントとして買い上げてくれた。
次の週は、へリクリサムが5束、スターチスが6束の収穫があり、町の公園で毎週金曜日に開かれる青空市場に売りに行くことを決定。これも彼女達にとっては初めての経験で、客に呼び掛けることすら恥ずかしくて、なかなか出来ない。私達が付き添って、客の目を引く花の並べ方や、売り込み方などアドバイスしているうち、あまり見かけない美しい花に通りすがりの人が、立ち止まったり、値段を聞いたりし始め、2時間あまりの間に完売。枝が折れたり曲がったりして、売り物にならないヘリクリサムの花は、花き栽培ボランティアの提案で、竹の小枝に刺して乾燥させることにしたのだが、彼女達はそれも全部売ってしまった。たぶん彼女達にとっては初めてのまとまった大金が入ったのではないだろうか。
今まで、花など売れないだろうと、半信半疑で作っていた花が売れたのだ。彼女達の喜び、興奮振りを想像していただきたい。そして、彼女達は、そこに自信と、勇気と希望を見出した。次の週彼女達は、切花の他に花の苗も売る意欲を見せた。NGOから寄贈された荷車に花の苗や切花を積んで、金曜の青空市場に出かけた。この日は、前回以上の1000ペソ(50ドル程度、最低賃金約18ドル/日)の売り上げがあったと喜んでいた。
たった2うねの切花は、あっという間に底をついてしまう。これからは秋に出荷する花の栽培に取り組んでいくことにしている。花の栽培の他にフラワーアレンジメントも教えよう。松かさやドライフラワー、竹や蔓の自然素材を使った手工芸品も作ろう。彼女達と共に私達ボランティアの夢もひろがる。
佐久市の皆さん、今回の記事に関連して、皆さんにお願いがあります。切花つくりに経験のない彼女達に、同じように経験のない私が出来ることは何なのか日々模索しています。皆さんにご協力頂きたいのですが、フラワーアレンジメントやドライフラワーを使った手工芸品の写真やアイディアを私のメール amatekosh@gmail.com にお寄せください。多くの皆さんの連絡をお待ちしています。
平成24年12月6日 日々暑くなっていくリベラ市より
シニアボランティア 平成24年度二次隊 渉外促進
輿石 あけみ
