JICAアフガニスタン所長 花里 信彦さんからのアフガニスタン便りNo11
更新日:2015年2月2日
(NO10:2011年1月)
花里 信彦氏
JICAアフガニスタン所長
佐久市志賀出身
アフガニスタン便り(第11号)
先ほど保健省でポリオ撲滅のためのワクチン供与プロジェクトの署名式がありました。日本側からは廣木大使と私が出席。アフガニスタン側は保健大臣と副大臣。実際にワクチンの接種にあたってもらうUNICEFの現地代表との署名式です。アフガニスタンは世界で4カ国しかない「ポリオ野生株」が常在する国です。いままで日本を中心とする国際社会の支援で発生件数が減少してきていますが、未だ撲滅にはいたっていません。今回の支援も4,5億円の予算で5歳未満児への全国一斉接種を行いますが、戦闘が繰り広げられている南部や南東部の一部にはどうしても届けることが出来ません。大人が作り出す戦闘は、何の罪もない子供たちの健康に生きる権利さえ簡単に奪ってしまうのです。
一人でも多くの子供たちに今回のワクチンが行きわたるよう、神に祈る気持ちです。
(写真-1:ポリオ撲滅プロジェクトの署名式の様子。右から保健大臣、廣木大使、筆者、保健副大臣)
昨日、家から100メートルほど離れたスーパーマーケットで自爆テロがありました。爆発音も振動も感じませんでした。通勤路なので今日も真横を通りましたが、被害は外からはわかりません。通常の自爆テロだと建物の中で爆発があれば、建物が壊れるぐらいの威力があるのですが、今回の自爆ベストは威力が小さかったようです。それでも外国人3名を含む8名が殺害され、15名ほどが大怪我をおっています。昨日昼過ぎに、家で働いてくれているお手伝いのセヤール君に「買い物は何かありますか。」と聞かれ、「今日は特にないからいいよ。」と答えて本当に良かったと思っています。爆破されたのは彼が良く使うスーパーなのです。本当に何時どこに死が転がっているのかわかりません。
(写真-2:自爆テロがあった翌日のファイネストスーパーマーケット。外からでは被害の様子はわかりません)
署名式に同席したUNICEFの現地スタッフが被害にあったようです。同じ志を持ってこの地で働いている人がいとも簡単に殺されてしまう現実。悲しいです。JICAは厳しい外出制限を徹底してきていますので、まだ被害者は発生していません。でも、少し長くここに滞在するとどうしてもストレスがたまり「外に出たい。買い物がしたい。」と言う人が必ず出てきます。私の義務は「絶対に妥協しない」こと。どんなに非難されてもルールを守らせること。シャンプーを買いに行って死ぬのでは日本で待っているご家族の皆さんに、愛する人たちに申し訳が立ちません。
去年の5月のテロを最後に12月までカブールの街は比較的平穏でした。ただし、これは12月までの話。すでに密約の効力は切れたのでしょう。去年と同じペース、もしくはそれよりも多いペースでカブールでのテロが発生しています。
PMSにやっていただいている工事が素晴らしい進捗を見せています。なかなか政府からの承認が得られず現場に入ることが出来ません。仕事の状況を中村先生から送っていただいた写真でお知らせします。真冬の河川工事の厳しさは佐久で身をもって経験しています。芯から冷える河仕事ほどつらい土木工事はありません。政府からの派遣ではなく、御自分の意思で、地元の農民のために命をかけて働いてくださっている中村先生の姿には本当に頭が下がります。
(写真-3:PMSの取水堰工事の様子。この工事により20万人もの人たちに安定した用水がいきわたります)
今日はサッカーのアジアカップの決勝。カタールのテレビ局がアフガニスタンにも生中継してくれました。永友の素晴らしいボールに合わせたリーのゴール。ウォーーーーーーーーーー!!!!です。
サッカーが特に好きなわけでもない私も「日の丸」にはなぜか気持ちが入ってしまいます。それにしてもスポーツの人を感動させる力はすごいですね。そんな発信力をODAの現場で働く私たちも持たなければいけません。ただただ事業仕分けにいじめられているだけではODAの本当の意義が国民の皆さんにわかっていただけませんね。
雪が少なく夏の旱魃が心配なカブールより。
1月29日、花里信彦
12月の中旬に軍のバスを狙った自爆テロが発生。そのあとも自爆テロが続くとともに多数の自爆犯が捕まっています。一部では5月のアトマール内務大臣とサレ諜報機関長の辞任に際し政府とタリバンの間で取引があったといわれています。反政府勢力に非常に強硬な態度を示してきた2人を治安担当からはずすことにより、反政府勢力はカブールへの攻撃を緩めると。どうも本当のようです。
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