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JICAアフガニスタン所長 花里 信彦さんからのアフガニスタン便りNo5

更新日:2015年2月2日

(NO5:2010年7月)

花里 信彦氏

JICAアフガニスタン所長

佐久市志賀出身

6月末にナンガルハール州に行ってきました。今回の目的は2つ。ひとつは国際軍(ISAF)の作戦の一環として行われる地域支援活動とJICAが実施する帰還民支援プロジェクトの調整。もうひとつは赴任前から楽しみにしていた日本のペシャワール会が実施している灌漑・農村開発現場の視察です。

マルワリード用水とガンベリ砂漠農業試験場にはペシャワール会の中村哲先生が案内してくれました。長年アフガンのために働き続け、この7年間は灌漑水路の建設に全てを捧げている、現地の農民にとってはまさに神様のような人です。もともとはお医者さんですが、「人が生きるのには薬よりも水が大事」だという現実に直面し、その後の人生を飲料水や灌漑用水の開発に捧げていらっしゃいます。今年2月に完成した全長24.3kmで最大取水量6立方メートル/s、1日あたり40万トンの水を供給できる灌漑は9700町歩の小麦畑、2400町歩の水田を潤すことが可能です。水路沿いには過去の旱魃で土地を捨てた人が戻り緑になった田んぼが広がり、去年まで砂漠だったガンベリで始めての田植えが行われるなど本当に信じられない光景を眼にしました。ガンベリで収穫したてを頂いた日本種のスイカは今まで食べたどのスイカよりも甘く爽やかでした。

水を必要とする人たちが自ら工事に参加し、参加することにより糧を得、最終的に耕作地を得たり、廃棄地に回帰したりと、この事業が地域の旱魃対策や農村開発のみではなく、労働者としての難民の吸収や再定住にも大きく寄与し、更には開発という目的を持った集団として地域の安定に果たしている役割は想像もできないほど大きなものです。軍隊が武装してやってきてその場しのぎで作ってすぐ壊れるような施設とは全く違います。まさに住民が自分たちのために命をかけて進めてきた事業であり、自分たちが生きていくために必要な事業なのです。周囲で水を睨んで小競り合いを続ける武装勢力もこの水路の建設に携わる人々には手が出せないそうです。彼らがいなくなると命の元の水がなくなるわけですから。中村先生がおっしゃった「日の丸に恥じない仕事をアフガンの人のためにしてきた。これからも。」という言葉はまさに私の想うところ。先生たちが成し遂げた、またこれから更に挑もうとする仕事の偉大さに感動し震えを覚えた私ですが、これから先生と一緒にアフガンの農民のために働けると思うと嬉しさと共に責任の重大さをひしと感じます。

灼熱の太陽に焼かれ砂漠の砂をかぶった体を水のシャワーで冷やし向かった先はナンガルハール州知事公邸。懸案だった国際軍が全面的にバックアップして実施しようとしている村落開発事業とJICAプロジェクトの事業の対象地域が重なったのです。外国の軍人が活動する場所での活動は、我々が外国軍と協力していると捉えられ攻撃対象になる危険性が非常に高いのです。
6月はじめに一度知事を訪ねJICA事業の延期を申し入れましたが、知事からは現地の人々のためになる日本の協力の重要さを強く訴えられ、如何なる調整をしてもJICAプロジェクトを止めないでほしいとの要請を受けました。その後さまざまな機関と調整しましたが現実は誰も責任を持った仕事をしていないということが明確になりました。大きな計画やスケジュールはあるけれど実際にやる人たちが誰かは良くわからないという状況。こんな支援ではまたアフガンの人たちが苦しむだけです。州内の事業の総括責任者である知事と話し合い、我々のプロジェクト対象郡には軍人(特に外国軍)を入れさせないことを条件にJICAプロジェクトを進めることにしました。「JICAは軍とは行動も共にしないし、協力もしない」というポリシーはアフガンで活動する援助機関の中では極めて異質ですが、知事はとても高く評価してくれ「我々は開発事業に軍を必要としていない。JICA関係者は何があっても守る。なにより、ここでは日本人が農民に水をもたらし、米の作り方を教え、生きる糧を与えてくれている(通訳なのでどこまで正確かわかりませんが)」、と抱きしめてくれました。
私の2倍は体重がありそうなすごくいかつい風体なのになぜかお茶目な感じがする人なのですが、このときはとても頼もしく愛おしく思えました。そして、アフガンの人たちに信頼される日本人として中村先生やペシャワール会の皆さん、我々JICAの先輩方が積み上げてきた協力に心から感謝しました。

次の日早朝、カブールに戻るため軍用飛行場に向かいました。正門に到着すると入れてもらえません。

いつもいろいろと意地悪される国際軍ですがいつもと違う感じ。場所を移し状況を確認すると2kmほど離れたところでテロがありタンクローリーが爆破されたとのこと。救急車と軍関係の車が飛んでいきます。至急ガードを呼び周りを固め国連と共に飛行場の動向を確認しますがなかなか状況がわからないうちに軍から退避指示。あわてて1kmほど移動し状況を確認すると空港がタリバンに攻撃されているとのこと。その方向を見ると自爆テロの噴煙が30メートルも上がっています。当然ながら飛行機は降りてこず。うーん、やっぱり戦争中です。

7月2日、からりと晴れて爽快なカブールより(今日のカブールの気温は31度、湿度が低いのでぜんぜん不快ではありません。 先日のナンガルハールの気温は43度で、これはさすがに暑すぎです。)

花里信彦

ガンベリ砂漠で田植えをする人たち。
後ろには開墾作業中の人たちも見えます。(ここも来年は田んぼになる予定)

 ペシャワール会が作った灌漑用水の遊水地の看板の前で。向かって左が中村哲先生。

伝統的な手動式の機械で堰板を調整する管理人たち。

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