JICA 輿石あけみさんのウルグアイ便り vol.8 最終号
更新日:2015年2月2日
輿石あけみさん (佐久市鍛冶屋出身)
リベラ県のポルトガル語事情
以前にも書きましたが、リベラ県はブラジルとの国境に位置し、道路一本でブラジルとウルグアイに分断されている土地柄から、スペイン語とポルトガル語が日常的に入り乱れています。ブラジル人とウルグアイ人が結婚し、どちらかの国に住み、もう一方の国に働きに行くという家庭も珍しくありません。子供達は日常的に両国の言語を聴いて育ちます。その為、スペイン語とポルトガル語が奇妙にミックスしたポルトニョールという方言まで生まれました。リベラ県に住む殆どのウルグアイ人は、ポルトガル語を聞いて理解できますし、ポルトガル語を話せる人も多いです。リベラ市の中心には免税店が並んでいて、その安さを求めてブラジルから多くの観光客が訪れます。そこに働く人達や観光客相手のホテルやレストランの従業員がポルトガル語を話すのは当然ですが、小さな雑貨屋や八百屋まで、観光客や地元に住むブラジル人にポルトガル語で応対します。
ブラジルと国境を接する地域の学校ではスペイン語とポルトガル語のバイリンガル教育がなされています。初等教育は5歳から12歳までで、日本の幼稚園から小学校に当たりますが、この間、各学校にはポルトガル語専門の先生が居て、週3回以上のポルトガル語の授業が義務付けられています。また、国境線に近い学校では、通学距離の関係から、ブラジル側からウルグアイの学校に通ってくる生徒も居ます。ですから、学校でも、スペイン語とポルトガル語、ポルトニョールが入り乱れています。学校でポルトガル語を系統だって学ぶようになると、スペイン語とポルトガル語両方の言語の正しい使い方が理解できるようになると教育者は評価しています。
中学生になると、ポルトガル語、フランス語、イタリア語、ドイツ語などを教える語学センターで、自分の好きな言葉を無料で学べますが、ポルトガル語を選択する生徒が圧倒的に多いようです。年2回、英語のTOEFLのようなポルトガル語の試験があり、多くの人がそれに挑戦します。
これは国際的なポルトガル語の資格試験で、初級から上級まで段階がありますが、この試験の合格レベルによってはブラジルでの就職の道が開けるのです。ウルグアイでは求人も少なく、専門職の給料もブラジル側の方が高いようです。ポルトガル語の先生に成る人ばかりでなく、医師等専門職の人もこの試験を目指して、私立の語学学校に通って受験勉強をします。ブラジルの大学への入学資格としての試験もあり、大学を目指す人はその試験に合格する必要があります。
修業式で詩の朗読をする子供達
修業式にブラジルの踊りサンバを発表
このように、国境付近に暮らす人達は上手に2ヶ国語を使いこなし、国境を自由に行き来して、自分に都合のいい場所で暮らし、仕事をして友好的に暮らして居ます。
ウルグアイは、ブラジルとアルゼンチンと言う大国に挟まれています。ウルグアイの北の果てに住む事になって一番驚き、感激したのは、ブラジルとウルグアイを隔てる国境がないことでした。人々は国境を自由に行き来し、買い物も仕事も、住居すらも自分に都合の良い方を選んで暮らしています。祭りも近接する両地域が一緒に祝います。両国の国旗を掲げて行進し、両国の国家が歌われます。アルゼンチンとの国境沿いに流れるウルグアイ川には、両国にまたがる大きなダムがあり、夫々の国に供給する電気を発電しており、両国の技術者達が働いています。ウルグアイは、これらの大国と争う事なく、夫々の国と上手に協力し合って自国を守り、発展していく道を選んでいます。
両国の国旗を掲げて仲良く行進
国境の学校の子供達
国境線を示す塚に上って遊ぶ子供達
アルゼンチンとの国境にある巨大なダム
私が暮らしたリベラ県の人々は、とても明るく、暖かく、家族や友人を大事にし、自分の時間も大切に守っています。休日や夕暮れ時には、家族や友人と公園や道端に座ってマテ茶を回し飲みしながら、まったりと時を過ごします。マテ茶を回し飲みするのは、友情の印、その仲間に入る事を許されたしるしです。親しい友人達とマテ茶を回し飲みする時間は、穏やかな幸せなひと時でした。こんな中で、私は、本当の人間の生き方、幸せのあり方を学びました。グローバル化が進む中で慌しくお金を稼ぐことだけが人生ではない。他人の生き方に左右される事なく、分相応の暮らし方をしながら、本当の自分の姿や生き方を見つけ出していく事こそ、幸せに人生を送る道ではないだろうか?そんな事を考えさせられる2年間でした。
9月30日、私は2年間の任期を終えてに日本に帰って来ました。これが最後のウルグアイ便りになります。
長い間私の拙い文章を飽きずに読んでくださった皆様に、また、このような発表の場を与えてくださった栁田市長や、掲載の度にお世話になった観光交流推進課の皆様に深く感謝してこの便りを終わりたいと思います。
本当にありがとうございました。どこかでお会いする機会がありましたら、お声をかけてください。
平成26年11月17日 佐久にて
元海外シニアボランティア 平成24年2次隊
渉外促進 輿石 あけみ
