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第33回 世界無形文化遺産「跡部踊り念仏」と佐久の古文書

更新日:2023年7月2日

遠い鎌倉時代末から近代まで 踊り念仏が盛んに催されて来た佐久

佐久に残る貴重な踊り念仏の記録
 古文書の行間には、祖先たちが生き生き活躍していた姿が鮮明に残されている。といわれています。
 世界無形文化遺産登録の跡部踊り念仏ですが、時宗総本山清浄光寺(遊行寺)に残されている公用日記、『藤沢山日鑑(とうたくさんにっかん)』によれば、驚くべきことに、室町時代から明治28年(1895)まで、一遍上人後継の遊行上人たちは、おりにふれ信州佐久に廻国し、そのときは跡部では、踊り念仏が盛大に催されていたことです。   

 その賑わいを佐久の先人、瀬下敬忠はその著書『こよみぐさ』に、「宝暦8年(1758)6月14日、藤沢寺遊行51世他阿一海上人修行、金台寺逗留14日より20日迄、大群衆毎日一万余人に及び大繁盛也」と書き残しています。
 現代からは人口がはるかに少なく、それも交通不便の時代でしたが、連日一万人を超える人々が、野沢に参集していたのですから、佐久の祖先たちは人生の楽しみを知っていたようです。
 また跡部区に残された貴重な史料『助念仏村々志帳』天保11年(1840)からも、当時の跡部の踊り念仏には「43ヶ村の念仏講中が結衆」とあるとおり、佐久平一円から大勢の村人が結集していたようです。

佐久に文化の種を、
 写真の和歌掛け軸は、佐久に残された時宗総本山と、佐久の結びつきを語るものです。
 この和歌を残した遊行上人42世他阿尊任ですが、寛文8年(1668)5月遊行上人に就任し、元禄4年(1691)9月時宗総本山清浄光寺で67歳で亡くなっています。
 掛け軸の書付に、遊行六七とあるとおり、尊任上人最晩年の和歌です。
 ところで一遍も、その後継者の上人たちいずれも、和歌の道に大変すぐれていました。
 それというのも、時宗の指導者たちは、歌人として和歌を詠むのではなく、和歌は教化の手段、上人たちから庶民への心からの語りかけの言葉、一遍からの時宗教学の特質をわかりやすく庶民に示したものでした。
 そもそも遊行とは「遊び」に「行く」ではなく、「遊ぶ」という言葉の本来の意味は「神仏に対する呼びかけ」であり「神仏に尽くすこと」と、時宗研究の権威今井雅治茨城大学教授は『時宗の美術と文芸』(1995年11月3日・(株)東京美術)の中に記しています。
 

遊行上人一行を迎えた佐久の華やかさ
 長野県内に中世まで、26ヵ寺を数えた時宗寺院も、現在では佐久市野沢金台寺と、25菩薩来迎会で知られた小諸市平原十念寺の2ヵ寺のだけとなってしまいました。
 佐久を訪れた遊行上人の貴重な地元の記録に『遊行上人廻国日記』(「信濃国佐久郡平原村小林家古文書目録」・平成7年9月16日発行・小林七左氏)があります。
 その日記に、文政3年(1820)2月の踊り念仏結衆に合わせ、遊行上人の廻国で佐久逗留があったこと、十念寺には20ヶ村から、54回の道場入りがされたことが記されています。
 また遊行上人の佐久ご通行の華やかさとして、佐久市内に残された、安永5年(1776)10月8日の『原村飯島昌雄日記』に「10月8日、遊行上人御出立遊ばされ候、継人馬、人足200人、馬80匹」とあります。
 当時大名でも、通行で利用できる人馬は、50人・50匹でしたから、時宗遊行上人の人足200人、馬80匹のご通行は破格の扱いでした。  
 

 時宗と徳川家康と用水開発者五郎兵衛
 佐久が歴史の宝庫である一つに、江戸幕府の編纂した『寛政重修諸家譜』巻214に残された、真偽のほどは別として、徳川家康のお家、松平家初代松平親氏と時宗の関係があります。
 それは土豪だった松平親氏は南北朝の騒乱のとき、敗残流浪の身となります。親氏は追っ手をくらますため、時宗の僧侶に身をやつし,東信濃を流浪していたようです。
 ときは年の暮れも迫った大みそか、佐久にゆかりの小笠原氏末裔が隠れ住むあばら家に、一夜の宿を願ったようです。
 そのとき貧しいながらも最大の供応をしてくれたことの感謝の証として、徳川幕府は時宗遊行上人のご通行には格別の対応をしていたようです。
 また徳川家康は、五郎兵衛の用水開発の支援として、国内最初の新田開発のための朱印状を下しています。それは松平親氏が南北朝の騒乱により世に隠れ住んでいたころ、同じように市川五郎兵衛の祖先も、後醍醐天皇方の敗残の武将として、生き残るため方々を転々としていたことから、家康は五郎兵衛に特別の扱いをしてくれたようです。(根澤茂)
 

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