このページの先頭です
このページの本文へ移動
  • ホーム
  • イベント情報
  • 収蔵美術品・作家
  • 企画展覧会情報
  • 美術館案内

館長からのメッセージ

更新日:2025年5月1日

多くの美術館や博物館にはその始まりの核となるコレクションが見られます。当館も、佐久市出身で(株)美術年鑑社 初代社長の故油井一二氏から寄贈された美術品を核として1983年(昭和58)5月に開館しました。建設にあたっては、多くの佐久市民からの期待と、篤志寄付をはじめとする支援が寄せられました。*1 そして当館は開館43年目を迎えます。

   *1. この期待の中には「市民の作品発表の場としての美術館」という思いが含まれて
   いたと思われますが、施設の規模の問題で「市民ギャラリー」が設けられませんでした。
   美術館ではこれを補う意味で、市民を対象とした公募展「佐久平の美術展」を開催して
   来ましたが、「市民自らが開催する発表の場」をどのように設けるかは、今後の課題の
   ひとつであると思われます。

43年という半世紀に近い年月は、日本だけでなく世界的にも様々な変化をもたらしています。例えば、情報の処理・伝達がデジタル技術の進歩によって急速に発達し、私達の社会・経済生活や労働環境の変容が進むなかで、特に画像処理の技術の進展が美術に影響を与えることは避けられないでしょう。こうした技術や考え方の変化だけではなく、施設の老朽化や、日本では人口減少や高齢化をはじめとする社会環境の変化、世界的な自然環境の変動による災害への備え等、当館にとっても考慮すべき課題は少なくありません。

 そのような中でも、佐久市はさきの市町村合併から20年の節目を迎え、当館でも新佐久市誕生20周年記念事業として、二つの展覧会「比田井天来とその流れ」、「佐久平の美術展の作家たち」を開催します。(詳細及びその他の展示、イベントについては、このホームページの展覧会案内をご覧下さい。)

ところで、普段私たちが「美術館」という言葉から思い浮かべるのは、「展覧会」の光景ではないでしょうか。展覧会あるいは展示会は美術館以外の場所でも様々な形で開催されています。では美術館の開催する展覧会の意義はどこにあるのでしょうか。それは、展覧会そのものを目的として開催されている点だと思います。そこでは展示資料について、また、資料間の関連性や体系性について意味内容が解釈され、説明され、展示を通してその意味内容を伝えることが目的になっています。これが美術館・博物館には学芸員とその研究活動が不可欠とされる理由のひとつです。また、美術館・博物館の任務には文化財の保護・継承があります。美術館・博物館に収蔵されている資料は、いずれも貴重な文化財であると言えます。これらの資料の意味内容は、各分野における学術研究の成果によって判断され、学術研究の進展にともなって見直されてゆくものです。ここにも美術館・博物館には学芸員とその研究活動が不可欠な理由があります。

佐久市立近代美術館は言うまでもなく市民のためものです。しかし市民だけのものとは言えないでしょう。当館は我が国の博物館法に則った登録博物館として設置されており、市外、県外から来館する皆様にも利用いただいています。いささかでも我が国の芸術・文化の発展に寄与するという意味では、日本国民のためのものでもあり、近年ではさらに国外からのお客様もあります。こうした広域化・国際化の趨勢を考えれば、施設面・運営面ともにICOMの博物館定義*2や「ICOM職業倫理規程」等の世界標準も念頭に、市民文化の発展に貢献する努力が求められているとも言えるでしょう。
   *2. ICOM(International Council of Museums 国際博物館会議)規約(2022年8月)
   の博物館の定義は「博物館は、有形及び無形の遺産を研究、収集、保存、解釈、展示する、社
   会のための非営利の常設機関である。博物館は一般に公開され、誰もが利用でき、包摂的
   であって、多様性と持続可能性を育む。倫理的かつ専門性をもってコミュニケーションを
   図り、コミュニティの参加とともに博物館は活動し、教育、愉しみ、省察と知識共有のため
   の様々な経験を提供する。」とされています。

美術館は全ての人に明るく楽しい分け隔てのない心躍る場所、また時には深い祈りや深い悲しみに共感することのできる場所でありたいと思います。美術館に託された文化財を守り後世に引き継ぐとともに、*3 先に述べたことも意識に置いて、館員一同日々の地道な努力を重ねて行きたいと思います。
市民そして来館者の皆様の、積極的な参加とご支援を心からお願い申し上げます。

   *3. 文化財の保護に関連して思い起こされるのは、当館でも作品を収蔵している日本画
   家・平山郁夫氏の業績です。氏は画家としてシルクロードをめぐる長大な旅をしたこと
   で知られていますが、そのなかで、人類の貴重な文化遺産である遺跡や遺物が戦争や動
   乱、盗掘などによって失われてゆくことに心を痛め、「国際文化財赤十字」の事業を提唱
   しました。豊かな芸術・文化の発展は世界の平和なくしてはありえません。平山氏の文化
   財保護のための活動は、広島での被爆体験を底に持つ平和への希求と相俟って、非暴力の
   反戦運動とも言えるものだったのではないでしょうか。文化財を守ることは、ひいては世
   界の平和を守ることに通ずるという望みをもちたいと思います。

館長 小山雅比古

プロフィール

小山雅比古

  • 1949年 長野県小諸市生まれ
  • 1979年 和光大学人文学専攻科 修了
  • 1984年 佐久市立近代美術館学芸員
  • 2025年 4月より現職
本文ここまで

佐久市立近代美術館 油井一二記念館

〒385-0011
長野県佐久市猿久保35番地5
電話:0267-67-1055
ファックス:0267-67-1068
お問い合わせはこちら
アクセス方法
アクセスマップ

休館日

毎週月曜日(休日の場合は開館)
展示替え期間(不定期)
年末年始期間(12月29日~1月3日)
ほか臨時休館することがあります。

開館時間

午前9時30分~午後5時

Copyright © SAKU Municipal Museum of Modern Art. All rights reserved.