更新日:2026年5月1日
美術館は地域の文化の象徴であり、地域の住民にとって誇るべき宝箱です。
国際宇宙ステーションに滞在した日本人宇宙飛行士のインタビューで、「故郷から離れてみると、故郷の本当のありがたさが見えてくる。だから若いうちに外の世界を見てください。」というメッセージがありました。
佐久地域は晴天率も高く、空の青さが美しい。そこにぽっかりと浮かぶ雲や気球を見上げたことが、季節や時間の経過とともに移り変わる顔にあたる風の肌触りや音・温もりや匂いも含めて、そこに住む皆さんの実体験となり原風景となっているのではないでしょうか。
そんなベースを持っている地域の人たちにこそ、駒場の森の中、彫像作品やモニュメントに囲まれたレンガの外壁の瀟洒(しょうしゃ)な佐久市立近代美術館に来ていただき、当館の作品と豊かな出会いをしていただきたいと思います。
美術館に収蔵する作品を見て、人はその出会いや感動で、元気が出たり癒されてほっとしたりすることで幸せを感じられます。ご家族と、友人や先生、彼氏彼女など、親しい誰かと一緒に美術館で作品を見たことも思い出となります。そんな思いをした場所が故郷にあれば、人はそれを懐かしく、誇りに思い、帰省の際にも友人や家族を連れて美術館にきっと行きたくなるでしょう。
私自身の「お宝」との出会いについて振り返ると、中学校の修学旅行で拝観した奈良法隆寺宝物殿の《百済観音像》が印象に残っています。暑さと人ごみの中を苦行の様に見学した中で、私を見下ろし屹然(きつぜん)としてたたずんでいる観音像との出会いは、さわやかな風が吹くようであり、しっかりと自分の中に入ってきた仏像でありました。それは、成人してからも、そこに行ったときに「また会えたね。いまはどんなことを考えているのか。何を話そうかな。」などと、十代、二十代、三十代・・・と観音像と会うたびに感じることが違います。自分の中の変わらないものと変わるものを振り返れる、そんな出会い方が出来ることがいいのです。「奈良、京都は日本人の心のふるさと」と言われる所以です。
この、佐久市立近代美術館には国宝の仏像たちに匹敵するような「お宝」が数多くあり、来館された方に何度も足を運んでいただけることで「心のふるさと」と言える場所になるでしょう。当館はそのことを地域に胸を張って発信し続けていきます。
平山郁夫画伯の《仏教伝来》《天山南路(夜)》《出現》を、ほのかな照明の中に浮かび上がるような陳列ケースのガラス越しに、しんと静まり返ったあの場所で日々のわずらわしさや喧騒から逃れて、ゆっくりと見る事が出来る幸せ。岩絵の具のしみいるような美しい色彩、流麗でかつ鋭い線が描き出す豊かな人物と空間、仏のごとき風格・品格を備えた名画だと思います。
もし、自分があの中学校の頃に《仏教伝来》や《天山南路(夜)》《出現》を見ていたらどんなことを感じていただろうか?佐久地域の中学・高校生の人たちは、いつでもこれらの名画に会いに来る事が出来る。なんてすばらしい事なんだろう。
「故郷の本当の良さ」に、この美術館という存在が当てはまると思います。
日本の近現代の画壇を代表する作家の、若い時期の作品を集めたコレクションがある当館は、日本でも稀有な存在です。風呂敷画商と自認する油井一二氏が、その審美眼と情熱と先見の明をもって収集した日本画、洋画、彫刻、工芸、書のコレクションの普遍的な価値を、ご来館された皆様に対して、当館としてどのように作品の見方や感じ方を伝え、鑑賞の楽しさを多くの人に広めていくきっかけを作るのか。
いつでも気軽にご来館していただき、作品と出会い、元気になって、しばらくしたらまた行ってみたくなる。そんなわくわくするような出会いの場を提供していくことが美術館に期待されている地域に果たすべき役割だと思います。
美術館のスタッフ一同で頑張っていますので、皆さん是非当館へ足をお運びください。よろしくお願いいたします。
館長 竹村忠彦
竹村忠彦


毎週月曜日(休日の場合は開館)
展示替え期間(不定期)
年末年始期間(12月29日~1月3日)
ほか臨時休館することがあります。
午前9時30分~午後5時