更新日:2024年9月4日
佐久市立近代美術館は美術年鑑社初代社長の故油井一二氏から佐久市に寄贈された美術品を核として1983年に開館しました。現在、収蔵資料を約3,400点保管しています。このうちの油井コレクションは、特に1980年頃に日本の公募団体に所属していた作家の、若い時期の秀作が集まる大変貴重なコレクションと考えています。今年度は油井コレクションの特徴を活かした展覧会や、佐久地域ゆかりの作家の個展をご案内する予定です。美しい作品や、それらに込められた思想や歴史について思索する知的な時間を、どうぞお楽しみください。
さて、2022年8月にICOM*世界博物館会議で新たに採択された博物館の定義や、2023年4月施行の(改正)博物館法のもと、美術館をとりまく状況や果たすべき役割は40年前と比べて大きく様変わりしました。こうした中で私達は、市民の皆さまにとって意味のある美術館活動のあり方を試行錯誤しているところです。ICOM世界博物館会議で採択された博物館の定義とは次の通りです。
「博物館は、有形及び無形の遺産を研究、収集、保存、解釈、展示する、社会のための非営利の常設機関である。博物館は一般に公開され、誰もが利用でき、包摂的であって、多様性と持続可能性を育む。倫理的かつ専門性をもってコミュニケーションを図り、コミュニティの参加とともに博物館は活動し、教育、愉しみ、省察と知識共有のための様々な経験を提供する。」(ICOM日本委員会による和訳)
この博物館の定義の採択は、博物館が自館を含む共同社会の変革に取り組もうとする姿勢の表明と言えるでしょう。SDGsも意識した内容となっています。ここには「絵画や彫刻を鑑賞する場」というような多くの皆さまが持つ美術館像に比べて、役割が多様化した美術館の理想像が示されています。美術館が「コミュニティの参加とともに活動し、教育、愉しみ、省察と知識共有のための様々な体験を提供」できれば、子ども達は豊かな教養、情操を身にそなえ、さまざまな課題を解決する力を蓄えられるでしょう。当美術館では、まず対話型鑑賞や展覧会ガイドの機会を増やすほか、学校等との連携を模索したいと考えています。また、どなたでも自らを変容させていくような創造的な行動姿勢を体験的に学べる場所として、美術館をご利用いただけるよう努めてまいります。当美術館の身の丈を考慮すれば、すぐに目に見えて変わることは僅かかもしれませんが、小さくとも確実な変容を目指していきたいと考えています。
市民の皆さまに愛される、新しい時代に相応しい美術館のあり方を考えていくとともに、佐久地域特有の風土に根ざした文化や伝統を守ることや、現代における価値を確かな裏付けによって残すことも、当美術館に与えられた役割と考えています。収蔵資料の調査研究、修復を堅実に行いながら、地域ゆかりの作家や収蔵作家の展覧会を企画していきます。そして、これらの展覧会事業を広義の教育現場において活用していただくことを願い、発信していく所存です。今後とも、皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。
館長 日比野 ルミ
註*International Council Of Museums
日比野ルミ/美術家
毎週月曜日(休日の場合は開館)
展示替え期間(不定期)
年末年始期間(12月29日~1月3日)
ほか臨時休館することがあります。
午前9時30分~午後5時