更新日:2025年10月1日
10月は、松本哲男《イグアス(ブラジル)》を紹介します。
「月替わりコレクション紹介」について
イグアス(ブラジル)
制作者:松本哲男
制作年:2003-2005年
材質・技法:紙本彩色
寸法:高さ220センチメートル*幅1200センチメートル
世界三大瀑布のひとつ、イグアスの滝を幅12メートルの圧倒的なスケールで描いた大作です。
イグアスは、南米、アルゼンチンとブラジルの国境に点在する大小275の滝の総称で、先住民の言葉で「大いなる水」を意味します。滝幅は4.5キロメートル、滝の最大落差は80メートルを超え、毎秒6万5千トンもの水を放出するその規模は世界最大といわれています。
本作の左手には、「悪魔の喉笛」と呼ばれる馬蹄形の大滝が描かれ、水飛沫をあげて轟音とともに大量の水が流れ落ちています。右手に進むと、緑深い熱帯雨林が茂っています。ひとつひとつの木々、葉などがつぶさに描かれ、まるで増殖していくように、うごめくように生きている、ありのままの生命の形が描かれています。さらに右手に進むと広大な金色の川面が広がり、その様はまるで黄昏の彼岸、西方浄土を思わせる荘厳さです。遥か彼方には弧を描いた地平線が伸び、森羅万象、まさに大いなる地球に対峙するかのような感覚を観るものにもたらします。南米の景色でありながらどこか仏教的な死生観も感じさせる、しみじみと胸に迫る作品です。
日本画家・松本哲男は1943年(昭和18)栃木県に生まれました。1968年(昭和43)宇都宮大学教育学部美術科を卒業した後、栃木県内の高校の美術教師として勤務しながら制作を続け、1969年(昭和44)院展に初入選します。その後も院展に出品を続け、日本美術院賞・大観賞を2度受賞、1983年(昭和58)には同人に推挙され、2006年(平成18)に日本美術院理事に就任しました。制作のかたわら東北芸術工科大学長を務めるなど後進の育成にも力を注ぎました。
《イグアス(ブラジル)》は、1990年代半ばから約10年の歳月をかけて制作された世界三大瀑布シリーズの内の1点で、2003年(平成15)院展に出品されました。その後、右側に2メートルが追加され2005年(平成17)に完成しました。
高さにするとマンションの4階に相当します。清水の舞台もおよそ12メートルです。
世界で最も有名な3つの滝のことで、ナイアガラの滝(北米)、イグアスの滝(南米)、ヴィクトリアの滝(アフリカ)をさします。


毎週月曜日(休日の場合は開館)
展示替え期間(不定期)
年末年始期間(12月29日~1月3日)
ほか臨時休館することがあります。
午前9時30分~午後5時