更新日:2024年12月1日
12月は、岩橋英遠《果樹園二題 北ぐにの春》,《果樹園二題 冬来る頃》を紹介します。
「月替わりコレクション紹介」について
《果樹園二題 北ぐにの春》,《果樹園二題 冬来る頃》
制作者:岩橋 英遠
生歿年:1903年生まれ1999年歿
制作年:1948年
材質・技法:紙本彩色
寸法:各169.5cm×361.8cm
岩橋英遠は北海道空知郡江部乙村(現 滝川市)生まれの日本画家です。江部乙村立北辰尋常高等小学校卒業後は家業の農業に従事し、21歳のときに本格的に日本画を学ぶために上京し、山内多門の画塾に入りました。師の逝去後は、昭和12年(1937)に安田靫彦を訪ねて以降、その指導を受けるようになり、終戦後に正式に入門しました。院展を中心に活躍し、昭和47年(1972)に日本芸術院賞を受賞、昭和56年(1981)に日本芸術院会員となりました。
岩橋が活躍した時代は、まさに戦後の日本画改革期でした。この時代を生きた岩橋もまた、洋画の手法を取り入れつつ、大自然を題材に幻想的で雄大な画面を構築しました。壮大なスケールで自然を捉えた作品で高い評価を受け、平成元年(1989)に文化功労者となり、平成6年(1994)に文化勲章を受章しました。
岩橋は、自身の原風景である北海道の広大な自然を愛し、自身の作品にもたびたび登場させています。《果樹園二題 北ぐにの春》,《果樹園二題 冬来る頃》に描かれているのも、岩橋が実家から東西に見た暑寒別岳と音江山、イルムケップ山の風景です。画面の手前にはりんごの木が描かれており、春と秋それぞれの季節を感じさせてくれます。
本作品が制作された昭和23年(1948)は、安田に入門して3年目、まだ日本美術院の同人に推挙される前です。遠近法を取り入れて描かれた本作品は、初期の画風を知る上で貴重な作品といえます。
故郷を描いた岩橋の作品として、79歳のときに制作された《道産子追憶之巻》(北海道立近代美術館蔵)がよく知られていますが、本作品はこれに連なる、戦後の画業の出発点となった作品ともいえるのではないでしょうか。
岩橋は本作品について「写生そのままの絵です」(註1)と述べていますが、本作品は、綿密に自然を捉えて描いた描写のなかに、どこか幻想的な雰囲気を感じられ、表層的な自然の描写にとどまらない、そんな魅力があります。
註1 『岩橋英遠画集』、株式会社求龍堂、平成5年 参照。
現在、佐久市立近代美術館では、今回紹介した《果樹園二題 北ぐにの春》,《果樹園二題 冬来る頃》を修復するための、「修復プロジェクト第3弾:佐久市立近代美術館所蔵の岩橋英遠の作品を修復したい!(外部サイト)」を実施しています。
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毎週月曜日(休日の場合は開館)
展示替え期間(不定期)
年末年始期間(12月29日~1月3日)
ほか臨時休館することがあります。
午前9時30分~午後5時