更新日:2025年7月1日
7月は、土屋禮一(註1)《山》を紹介します。
「月替わりコレクション紹介」について
《山》
制作者:土屋禮一
生没年:1946年-
制作年:1989年
材質・技法:紙本彩色
寸法:高さ180.0×幅207.7cm
原体験、原風景は、画家が制作する作品と無関係ではいられないものでしょう。土屋禮一の風景を観るときも、彼の故郷が本州の内陸に位置する岐阜であることを考えます。
では本作《山》はどうでしょう。ひっくり返したすり鉢のような形をした「山」が深い黒と緑で描かれています。色彩のみで表現され、それ以外に樹木の幹や枝はなく、どこの山といえる形の特徴がありません。誰もが“山”だと認識しますが、山の名を答えられる人はいないでしょう。画面の下部にわずかに描かれた平地から、土屋の故郷の里山かもしれないと想像する程度です。
この曖昧模糊とした、しかし画面から湧き上がってくるような強い表現に、鑑賞している故郷を愛する者の心は共鳴するのです。
「故郷での自然の中に座り込んでの写生は本当に幸せで、そのような幸福感が身体に住み着いており」(註2)と語っています。本作の魅力は、土屋が故郷に注いだ深い眼差しに根差しているのかもしれません。
土屋は1946年(昭和21)、岐阜県養老町に生まれました。1967年(昭和42)武蔵野美術大学を卒業、日展に初入選し、同郷である加藤東一に師事しました。日展で受賞を重ね、1980年(昭和55)に会員となりました。1990年(平成2)MOA岡田茂吉賞優秀賞受賞、1996年(平成8)から金沢美術工芸大学教授(現在名誉教授)を務めました。1998年(平成10)瑞龍寺本堂障壁画を完成、2008年(平成21)日本芸術院会員。現在、日展副理事長を務めています。
註1:禮一の禮はネに豊
註2:土屋禮一『小景画情岐阜・土屋禮一(新美術新聞)』(美術年鑑社2024年9月15日)
毎週月曜日(休日の場合は開館)
展示替え期間(不定期)
年末年始期間(12月29日~1月3日)
ほか臨時休館することがあります。
午前9時30分~午後5時