更新日:2025年8月1日
8月は、 田辺 光彰《混在(と)》を紹介します。
「月替わりコレクション紹介」について
《混在(と)》
制作者:田辺光彰
制作年:1979年-1980年
材質・技法:木材(けやき)・彩色
寸法:高さ63.0cm*幅58.0cm*奥行30.0cm
《混在(と)》は1980年(昭55)、(あ)(ね)(ふ)とともに、東京・銀座のギャラリーで発表されました。(と)は、木材(けやき)二つを三角柱と円柱状に成形し塗料で黒く塗り組み合わせた作品です。組み合わせた形がひらがなの(と)にみえるかもしれません。木材なので重量もあるうえ、横に倒した三角柱の上になった面に、円柱が少し斜めに立っているので、倒れないか心配で手を出して支えたくなる極めて不安定な形状です。動かないようにつなぎとめることもしてありません。(あ)と(ふ)も佐久市立近代美術館が収蔵していますが、それらの作品も(と)と同じように木材を組み合わせた作品です。
(と)に先立ち、1976年(昭51)に、出身地の中学校の敷地内、樹木の下に《山内によする》が設置されました。この作品は高さ2.5メートル、幅16メートル、奥行7メートルのコンクリート製の構造物です。作品の上に人が立てそうな十分な広さがありますので、昇ってみるのですが、上に水平な面がなく、溝やステンレスの棒があって立つことや座ることを邪魔します。作品の傍らに立って寄りかかっても、微妙な傾斜が、短時間で身を動かすことを要求します。
混在を「複数のものが入り混じって存在していること」と解釈すると、田辺の《混在》のシリーズにおける複数のものは、複数の木材ではなく、作品と鑑賞者(とあるいはその場に存在しているその他のもの)が混じっている状況を指しているのでしょうか。
この後、田辺はステンレス製の《混在》を制作し、いくつかのコンクールで賞を受けました。材料にステンレスを用いることで、公共の空間に設置する彫刻として評価を高める結果となりました。田辺のパブリック・アートは、佐久市立近代美術館前庭で《さく》(1983年制作)、さいたま新都市合同庁舎1号間前・月の広場で《爬虫類》(2000年制作)などを観る(体感する)ことができます。
1961年(昭36) 多摩美術大学彫刻科卒業
1962年(昭37) アメリカの彫刻家イサム・ノグチと出会い、以後交流し、強い影響を受ける
1968年-1975年(昭43-50) 南米、ヨーロッパ、アフリカ、中東など50カ国を回る。イタリア・シエナのカンポ広場に影響を受ける
1976年(昭51) 横浜市北部近郊に《山内によする》を設置
1978年(昭53) 初個展開催(ギャラリー・オカベ・東京・銀座)
1979年(昭54) 第1回ヘンリー・ムーア大賞展で《混在(あ)》がジャコモ・マンズー特別優秀賞を受賞
1980年(昭55) 第7回神戸須磨離宮公園現代彫刻展で《混在(内部・あ・外部)》が宇部市野外彫刻美術館賞を受賞
1981年(昭56) 第2回ヘンリー・ムーア大賞展で《混在(内部・あ)》が優秀賞を受賞
1983年(昭58) 佐久市立近代美術館前庭に《さく》を設置
1984年(昭59) 「第1回佐久平の美術展」審査員
1986年-1987年(昭61-昭62) ソウルオリンピック関連事業で《SEOUL・籾・熱伝導》を制作。環境破壊への警鐘となるモティーフとして野生稲に注目する
1992年(平4) 農学者佐藤洋一郎と野生稲自生地保全の運動をはじめ、稲籾をテーマとした制作やプロジェクトを国内外で行なう
2000年(平12) さいたま新都市合同庁舎1号間前・月の広場に《爬虫類》を設置
2006年(平18) オーストラリア、クイーンズランド州マリーバ湿地帯に《KADIMAKARA(爬虫類・MOMI-2006)》を設置
2008年(平20) 国連食糧農業機関(FAO)本部(ローマ)に《A Seed of Wild Rice MOMI-2008》を設置
2009年(平21) ヴァールバル全地球種子庫(北極)に《THE SEED 2009-MOMI-IN SITU CONSERVATION》を設置
2014年(平26) 日吉の森庭園美術館に田辺光彰美術館を開設
参考文献
野村太郎編集『田辺光彰』((株)八坂書房・2001年)
毎週月曜日(休日の場合は開館)
展示替え期間(不定期)
年末年始期間(12月29日~1月3日)
ほか臨時休館することがあります。
午前9時30分~午後5時