生物多様性保全活動検証事業について
更新日:2024年3月21日
令和5年度「長野県地域発元気づくり支援金」を活用した事業です
事業概要
目的
市内の森林内の植物の種類の減少や下層植生の低下が見られることから、植物の種類や下層植生の維持・回復を図ることで、持続可能な森林生態系の保全、及び生物多様性の保全を目指す
調査実験業務(委託業者:NPO法人 生物多様性研究所あーすわーむ)
- 業務箇所:佐久市協和コトメキ地区 10箇所
- 実施時期:令和5年6月~令和5年11月までの期間で5回実施
- 植生調査:高木、中低木、草本、ササ、実生、植生回復柵調査
- 動物調査:センサーカメラの画像解析、ライトセンサス、糞調査
佐久市生物多様性専門家会議
- 森林生態系の維持回復に向けた調査実験を行うにあたり、効果的な成果を得るための助言や、検証結果を基にした対策を検討するための会議体
- 開催時期:令和5年5月~令和6年2月までの期間で5回開催
啓発活動
- 地元説明会:協西地区を対象として、3回開催(7月23日、10月16日、2月25日)
- 出前講座:浅科中学校3年生を対象に10月11日に開催
調査実験結果
植生調査
・協和コトメキ地区の高木、低木、草本、ササ、実生(今年発芽した木)を調査した(図1、図2)。調査地は、カラマツやヒノキの人工林と、コナラ、オニグルミ、ミズキ、ハルニレなどの天然林で構成され、山地帯を指標とする種群が確認できた。
・草本は162種生息し、イヌトウバナ、タニタデ、ツルニガグサなど、やや湿性を好む植物が目立っていた。
・植生調査と合わせ、植物への動物の影響を調査したところ、高木にはシカの角研ぎや樹皮剥ぎ(図3)、中低木にはシカの食痕(図4)、ササや草本にも食痕があった。
・草本ではオシダやフタリシズカなど、シカが好まない草や、シカと共存するケチヂミザサが多く生息していた。
・調査地のササはミヤマクマザサで、通常1~2mの棹丈が、平均で最大46cmであった。
図1 植生調査用の枠
図2 ササ調査風景
図3 樹皮剥ぎ痕
図4 低木の計測 シカの食圧により枝の先端が無くなっている
動物調査
・協和コトメキ地区に生息している哺乳類について、センサーカメラ、糞調査、ライトセンサスを実施した。
・センサーカメラの解析では全10種類の哺乳類が撮影された(図5、図6)。
・糞調査で確認された糞のすべてがニホンジカのものであった。
・牧場周辺で実施したライトセンサスでは、最多で351頭のシカが目視で確認できた。
図5 ニホンジカ
図6 ニホンテン
植生調査回復実験
・シカの影響で植物が減ってきているかどうかを調べるため、調査地内の11ヵ所に柵を設置(図7)し、柵の中と外で植物の生育に違いが生じるか調査、実験を行った(図8)。
・調査実験の結果、6ヵ所の調査地で柵内の方が植物の成長が優位であった(図9、図10)。柵があることで、シカの食圧から植物を守ることができるということが分かった。
図7 植生回復柵設置風景
図8 植生回復柵と柵内の調査風景
図9 柵の内と外での違い
図10 柵の外のフキのシカ食痕
専門家会議の考察
植生調査の結果から
・調査地の森林内の植物は、シカの影響を受けていると推定される
・森林下層植生衰退度の区分は、調査結果から「長野県第二種特定鳥獣管理計画 第5期ニホンジカ管理」で示されている、森林下層植生衰退度3もしくは4と推定される(この区分は、6段階のうち、3もしくは4であり、下層植生の衰退がこれ以上進行すると森林回復が難しい状態となる可能性がある)
・望月協和地区の森林内は植物の種数が減少傾向であり、確認された草本162種のうち57種に食痕があったことからシカの嗜好性により、特定の植物が減少していく可能性がある
・草本が減少することにより植被度が下がり一部土壌が露出、リル(水の流れによる溝)が形成され、土壌の流出が始まっているなど、目視で災害に繋がる箇所の可能性がうかがえたことから更に調査する必要がある
・高木となり得る中低木は確認できなかったが、稚樹は確認できたことから、稚樹を保全することで森林回復に向けた保全が可能であると推定される
動物調査の結果から
・牧場周辺の森林内においてシカの生息数が高いことで、森林内の下層植生衰退の原因になっていると推定される
事業報告書
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