香坂山遺跡の国史跡指定について
更新日:2025年6月24日
香坂山遺跡の国史跡指定について
令和7年6月20日(金曜)、佐久市香坂に位置する「香坂山遺跡」が、国の文化審議会から国史跡指定の答申を受けました。
今後は官報告示などの所定の手続きを経て、国史跡に指定される見込みです。
香坂山遺跡とは
遺跡の立地
香坂山遺跡は佐久市香坂の標高1,140mの尾根上に立地しています。
その周辺には付近で採取できるガラス質黒色安山岩を利用した「八風山遺跡群」や「下茂内遺跡」といった旧石器時代から縄文時代にかけての石器製作遺跡が形成されています。
香坂山遺跡の眺望(国武2022より転載)
発掘調査の経緯
1997年、佐久市香坂の上信越自動車道八風山第2トンネル換気塔建設に伴い、長野県埋蔵文化財センターによる発掘調査が行われました。その結果姶良Tn火山灰(約30,000年前)よりも下位の地層で石刃を含むガラス質黒色安山岩製の石器が見つかりました。
出土した地層や年代測定の結果、石刃石器群としては最古段階のものであることが判明しましたが、当時の日本列島における旧石器編年に当てはめることが難しく、石器群の評価は保留とされていました。
2020年、香坂山遺跡から出土した石刃に着目した奈良文化財研究所の国武貞克氏は、香坂山遺跡で発掘調査を実施しました。その結果、大型石刃・小石刃・尖頭形剥片というユーラシア大陸初期後期旧石器時代の石器群と共通する石器組成が確認されました。
2024年からは香坂山遺跡の学術的重要性を鑑み、佐久市教育委員会による遺跡の範囲確認調査を実施しました。直接調査することが難しい地点に関してはボーリング調査を実施し、香坂山遺跡が所在する尾根上約2,250平方メートルが遺跡の範囲だということが分かりました。
大型石刃製作址(国武2022より転載)
香坂山遺跡の土層堆積(国武2022より転載)
出土した石器と年代
香坂山遺跡からは、大型石刃・小石刃・尖頭形剥片という、ユーラシア大陸の初期後期旧石器時代に残された石器と共通する石器が発見されました。
その年代は約36,800年前で、日本列島における石刃石器群としては最古級の年代です。
これまで日本列島の石刃石器についてはその出自が不透明で、大陸から人類の移動と共に技術が伝播してきたものなのか、列島内で自生的に発生したものなのかが分かりませんでした。
しかし香坂山遺跡からユーラシア大陸初期後期旧石器時代と共通する石器群が発見されたことにより、日本列島の石刃石器群の起源がユーラシア大陸であったことが分かりました。
香坂山遺跡出土の石器(国武2022より引用)
香坂山遺跡出土の石器(国武2022より転載)
引用:国武貞克2022「佐久市香坂山遺跡の発掘調査の成果と課題」『検証:サピエンス日本列島への道』
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