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第14回 少子化社会と子育て支援は江戸の昔から

更新日:2021年4月4日

江戸時代に子育て支援対策をいち早く始めた村々

佐久の良さは江戸の昔から
  佐久市に永らく住んでいると、佐久の良さに気づくことはあまりありません。でも古文書の行間を追って行くと、地域の祖先たちの開明さに感激することがあります。
 例えば、渋沢栄一の曾祖父初代宗助は一家を構え自立し「東ん家」という家を興します。彼は佐久へ稼業で幾度か訪れる内に、佐久に思い入れがあったのでしょう。愛娘が誕生したときその子を『佐久』と命名します。
 やがて『佐久』の孫は6代目市川五郎兵衛の孫と結婚し、新たな日本初の事業として、官営富岡製糸場建設に用いる洋式煉瓦製造のため日本煉瓦製造、その後は秩父鉄道、秩父セメント株式会社の創業に関係します。まさに信州は進取の世界です。

古文書に残された佐久の子育て 
 ところで古文書を例に、江戸時代佐久における先進的な子育て支援対策について、樋口政則さんの「『不思議な村の子供たち』江戸時代の間引きや捨て子と社会」1995年(平成7年)名著出版があります。
 著者は江戸時代後半期は少子社会であり、その解決のため支配者は執拗に捨子を禁じ、間引きを嫌い、その改善策を熱心に取り続けていたとしています。
 

 その例として甘楽郡南牧に接した、佐久市内の大給松平氏信州田野口領で文化6年(1809)2月に出された「間引き・堕胎禁止令」、そして、渋沢栄一「内山峡之詩」碑がある信州佐久郡内山村で、文化13年(1816)12月、組頭泰助が残している代官所宛て「内山村泰助小児養育金貸付会所仕法御採用願」を挙げ、徳川幕府が寛政の改革において積極的に推進していた地方での子育て支援対策を紹介しています。

 

子供たちを大切にしてきていた佐久のむら

 江戸東京博物館長で、財団法人徳川黎明会徳川林政史研究所長を務める竹内誠氏は、同研究所発行図書「江戸時代の古文書を読む『寛政の改革』」の中で、「松平定信と寛政の改革」と題し、寛政の改革における農政の主眼は、農業人口の回復と増加、そして耕地面積の復旧増大が政策の最重要課題であった。そのために「荒地起返並小児養育御手当御貸付金」という名目の公金貸付政策が推進され、それがこの期の農政の一大特色であったとしています。
 これを裏付ける資料として佐久市内では、先に挙げた文化13年(1816)12月、内山村組頭泰助が残している代官所宛て「内山村泰助小児養育金貸付会所仕法御採用願」、その外にも「小児養育金貸付会所引き受け証文」(佐久市志史料目録1 中・近世(1)G貯穀・救恤1288神津得一郎家救恤出米関係資料(三)文化13年)が残されています。
 江戸時代から子供を地域の宝とする佐久であるからこそ、渋沢栄一の平和と軍縮、相互互恵の精神の発端「内山峡之詩」碑を、太平洋戦争の影が忍び寄ってきた昭和15年(1940)11月、佐久の人々が熱心に協力し、内山峡に建てたことは副碑に刻まれているとおりです。
 この地域の人々にはいつの時代も、子供たちの健全な成長と、輝く未来を願っていたからでしょう。

古文書から知る時代を変えてきた村

忘れられている南牧村の先進さ

市川一族が活躍した上野国甘楽郡南牧は、稲作経営が地形的に不適地のため不可能でした。そのため徳川幕府は地域起こしとして、国内流通を独占する砥山鉱山経営を幕府代官中野七兵衛に命じ立ち上げ、その後、鉱業権は南牧の人々に譲渡され、村の主要産業としてきました。
 しかし、砥石製造に伴う健康被害の塵肺により、江戸時代も人口減が大きな地域での社会問題となりました。そのとき、南牧の人々は支配の代官と掛け合い、人口減は人手不足から労務単価の上昇、そして地域の活力減につながっているので、公費による子育て支援金の給付を働きかけ、その実現を達成しました。
 左に掲げた写真は、甘楽郡南牧村羽澤村名主の公用記録を書き留めた『御用留』の中に残された、文政8年(1825)から天保3年(1832)の間の「小児養育料御手当金」支給記録です。

忘れられている地域社会を変えた功績
 下に掲げた写真資料「条教談話」は、江戸時代後期の名代官・早川八郎左衛門正紀(1739~1808)が建てた日本最初の領民への社会教育施設「典学館」(1795、美作国久世)、並びに「敬業館」(1798、備中国笠岡)、何れも現在の岡山県の施設で使用された農民教化用のテキストです。
 当時蔓延していた堕胎・間引きの悪習を改善するため、甘楽郡南牧の子育て支援精神を大きく取り上げ、小さな命の尊重を領民に教え諭しています。

                                       佐久市五郎兵衛記念館長 根澤茂(ねざわしげる)

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