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第3回 渋沢栄一の人生を変えた幕末悲運の志士「尾高長七郎」と佐久

更新日:2021年3月7日

館長の豆知識(3) 渋沢栄一の人生を変えた幕末悲運の志士「尾高長七郎」と佐久

 尾高長七郎とは
渋沢栄一の従兄に当時日本で一、二の剣の使い手と言われ、また漢詩文にも優れた遺作を残す好男子尾高長七郎(1836~1868)がいます。当時の若き俊英が憂国の志士を志したように長七郎も成長するにつれ各藩の志士と深く交わるようになります。
 文久元年(1861)正月のことです。江戸城坂下門外で老中安藤信正が水戸藩士らに襲撃される事件が発生します。幕府方は長七郎もその一味だとして捕吏を深谷へ差し向けます。それを知った栄一は長七郎を守るため4里の道を駆け熊谷宿で漸く長七郎を探すと事態の危急を知らせ、取り急ぎ渋沢家が信頼している信州佐久岸野下県村の木内芳軒のもとへ落ち延びるよう説得をします。
 渋沢家からの依頼に応え信州佐久では木内芳軒家族が身命を賭して長七郎を匿ったうえ安全な裡に京都までの逃避行を成功させます。
 高崎城乗っ取り計画
 その年の暮れ、攘夷思想にかられた栄一達は武器を準備し高崎城を乗っ取り、そこから横浜外国人居留地を襲撃しようという暴挙ともいえる大事件を画策します。その時京都で最新の見分を深めて戻って来ていた長七郎は栄一たちの計画を聞き、その無謀さを指摘し必死に制止しました。その甲斐があり高崎城乗っ取り事件は未遂に終わります。このとき栄一が計画どおり高崎城乗っ取り事件を挙行していたら、計画は失敗に終わり彼らの命は絶たれ、日本の歴史は変わっていたでしょう。佐久の小さな善意が歴史を変えた瞬間でした。
 
渋沢栄一の恩人木内芳軒の最後
 その後、芳軒は栄一達からの仕官の誘いを断り続け、束縛されない詩歌を賦す自由な日々を送っていました。しかし残念なことに明治5年(1872)8月、芳軒は大病を患います。佐久では十分な治療ができないため上京し、知己たちが心配して当時としては最高の医療を施しました。しかしその甲斐なく10月12日46歳で療養先の東京で亡くなります。
 今に残る名作漢詩詩集
 芳軒の死を悼み万感の哀惜を込め『芳軒居士遺稿集』を明治三詩人と言われた鱸松塘が出版人、大沼枕山と小野湖山が序文を寄せるなど、三巨匠と関係者が力を合わせ遺稿集が発行がされます。
 上巻は並木梅源、下巻は依田稼堂が全校を担当しています。その上巻には「上玄夜藍香尾高君過宿今東韻」と尾高惇忠(藍香)「十七夜青淵澁澤君見訪席上同賦用上元韻」と渋沢栄(青淵)との惜別の二首が選ばれています。詩の題に「上元」とありますから季節は旧暦の1月15日あたりでしょうか。名残が尽きない別れの情を詩に託したこの年も栄一と惇忠は命懸けで上信国境を越えてきたようです。
 この『芳軒居士遺稿集』には芳軒と生涯変わらぬ深い交友を重ねた佐久間象山が京都への帰らぬ旅路を見送った詩も選ばれて載せられています。旅立つ心からの友を見送るこの三首は『其の詩、神清韻秀』と評された芳軒の詩の神髄です。

 木内芳軒一門のその後です。市川五郎兵衛は50歳を過ぎてから安定した小領主の生活を投げ捨て戦乱で荒廃した佐久平復興のため常木、三河田、五郎兵衛用水の開発に挑みました。自己献身の精神は引き継がれ芳軒の高弟依田稼堂は63歳を迎えた大正元年(1911)12月、若人の教育のため乞われて佐久間象山の過ごした松代の千曲川対岸にある上水内郡組合立東部農学校(現長野吉田高校)教授を長野県から委嘱され赴任します。(昴家文書B222)
 しかし稼堂の教育への熱情も虚しく大正3年(1915)1月、病を得た稼堂は65歳の生涯を長野市で閉じることになります。稼堂の子、依田源七は佐久間象山について父から良く語り聞かされていたらしく残されている写真(昴家文書I4-15)には、象山神社など松代詣での記念写真が多いのも、激動の時代に生きた木内芳軒と、佐久間象山の心を熱く父親の稼堂から聞かされていた証拠でしょうか。   佐久市五郎兵衛記念館館長 根澤茂(ねざわしげる) 

木内芳軒
南佐久郡誌より引用

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