更新日:2026年6月16日
2016年に8月11日が「山の日」として国民の祝日になってから10年を迎えます。信州佐久の地から、山に親しみ、山の恩恵に感謝するこの祝日の10年を記念して山にちなんだ展覧会を開催します。
1993年、東京から長野県小諸市に、翌年長野県東部町(現東御市)に移住した美術家島州一(しまくにいち・1935-2018)は、長野県境に連なる山々の南斜面の集落の中に居を構え、日々生活を重ねていきました。そこから南に広がる大パノラマを眺めると、左後方に噴煙を上げる浅間山がありました。
――私とこの土地を密着させるためのアイコン探しに10年は軽く過ぎたが、探求を続けるうちに浅間山がクローズアップされ私の意識を独占した(註1)
そう書いている島は、浅間山に魅了されたといって良いでしょう。2006年に浅間山をモチーフにした「ASAMAシリーズ」の制作、そして翌年の2007年より自らが日常着用しているシャツをトレースした作品《Tracing-Shirt》の制作を開始しました。
トレースは対象をなぞって写し取る技法ですが、情報過多の時代に対応する手段として1987年から島が行っていた表現手法のひとつでもあります。島は次のように書いています。「有り余る情報を任意にすくい取ってつくり直し、様々な異なる次元の情報を自分の網目でふるい直してパロディ化してみることも出来る。それは第二の自然である。すなわち情報の確認のために対象をつくり直して表現するパロディ用法である」(註2)
島が、この地での定住とこの地の象徴としてとらえた浅間山をモチーフとすることを、同意義的に行おうとしようとしたとき、島のシャツはトレースという情報確認の表現手法によって浅間山に見立てられ《Tracing-Shirt》が制作さました。このライフワークは、制作が困難になる2017年まで続き、作品点数は236点に及びました。
本展では、東御での晩年の25年、この地で浅間山のトレースを10年以上続けた島州一の代表作、《Tracing-Shirt》を大々的に紹介します。
註1:島州一「『原寸の美学』Finger PrintからTraiceへ 1980→2011」(『島州一展「原寸の美学」プレスリリース』市立小諸高原美術館、2011年)
註2:島州一「言語の誕生」(『武蔵野美術大学研究紀要35号』武蔵野美術大学、2004年)
1935 東京都生まれ
1958-64 「集団・版」の結成に参加
1959 多摩美術大学絵画科卒業
1980-81 文化庁「芸術家在外研修」研修生として欧米に留学
1987 自らの表現行為をモドキレーションと命名
1994 長野県東部町(現東御市)に住居兼アトリエを構え終の住処とする
2005 武蔵野美術大学研究紀要に自らの絵画論「言語の誕生」を寄稿
2007 Tracing-Shirtシリーズはじまる
2018 逝去(82歳)
1973 「第12回サンパウロ・ビエンナーレ」《200個のキャベツ》を出品(同作品はサンパウロ近代美術館に収蔵)
1977 「今日の美術'77見えることの構造展」(西武美術館/東京都)、「現代美術の鳥瞰展」(京都国立近代美術館 /京都府)
1982 「第4回シドニービエンナーレ出品」(オーストラリア)
1987 「アナログとデジタルの変換」(双ギャラリー/東京都)
1989 制作委託による開館記念展「広島・ヒロシマ・ HIROSHIMA」(広島市現代美術館/広島県)
1991 公開制作「影の梱包―ピアノ」(町田市立国際版画美術館/東京都)
1995 「戦後文化の軌跡1945-1995」(目黒区美術館ほか全国巡回)
1996 個展「言語の誕生」(玉川高島屋アレーナホール/東京都)
2011 「島州一展『原寸の美学』」(市立小諸高原美術館/小諸市)
2014 「1974戦後日本美術の転換点」(群馬県立近代美術館/群馬県)
2016 「島州一 世界の変換と再構築」(埼玉県立近代美術館 /埼玉県)
2019 「追悼展島州一版画展」(須坂版画美術館・平塚運一版画美術館/須坂市)
1971 第10回現代日本美術展、芸術生活画廊コンクール展各コンクール賞受賞
1972 第7回ジャパン・アート・フェスティバル 大賞受賞
1974 第5回クラコウ国際版画ビエンナーレ(ポーランド)第2席受賞、第9回東京国際版画ビエンナーレ《シーツとふとん》長岡現代美術館賞受賞(同作品は東京都現代美術館に収蔵、新潟県立近代美術館寄託)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ《Construction of Finger Prints》優秀賞受賞
浅間山は、標高2,568メートル、東西約15キロメートル、南北に約30キロメートルの広がりをもつそうです。簡単に測りようがないその圧倒的な質量は、この地であればどこに身を置いても実感できます。逆すり鉢状をしてゆったり構えた姿は、揺るぎのない「静」イメージがあります。しかし活火山である浅間山は、近年では2019年8月7日にごく小規模ながら水蒸気噴火を記録(註3)するなど、常時白く上がる噴煙は、絶え間ない地球の脈動を伝えているようで、「動」のイメージをあわせもっています。私たちは、いつの時代からか常に浅間山の姿と噴出す煙を道標として生活していました。それは、大地の痕跡や、先人が紙に託した絵や文字として、記録に残っていますから、この地に暮らす人の形成に影響を与えているに違いありません。本展では、美術などの文化と浅間山の関係を、当美術館のコレクションや、浅間山の記録などゆかりの品を交えて紹介します。浅間山と体に刻まれた記憶を呼び覚ましながら、心ゆくまでご観覧ください。
参考文献:堤隆『浅間山』(浅間縄文ミュージアム・2004)
註3:気象庁『浅間山 有史以降の火山活動』(気象庁ウェブサイトURL
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/306_Asamayama/306_history.html・2026/3/22閲覧)
2026年7月18日(土曜日)から8月30日(日曜日)まで
7月21日(火曜日)・27日(月曜日)
8月3日(月曜日)・17日(月曜日)、24日(月曜日)
午前9時30分から午後5時まで
佐久市立近代美術館 油井一二記念館
島州一のトレース手法を体験しよう。
参加には事前申込が必要です。詳細はイベント情報(調整中)のページをご覧ください。
駒場公園内にある野外彫刻のメンテナンスを体験してみませんか?
参加には事前申込が必要です。詳細はイベント情報のページをご覧ください。
参加無料。要観覧券
美術館スタッフと文化財事務所職員の案内で展覧会と火砕流埋もれ木や日本最古級の石刃石器を見学
参加には事前申込が必要です。詳細はイベント情報のページ(調整中)をご覧ください。
島州一展は、展示作品を撮影してSNS等で公開できます。感想と一緒にどんどんポストしてね。ルールを守ってお楽しみください。
平山郁夫《仏教伝来》などの収蔵品を展示しています。
(準備中)展覧会チラシ 展示作品リスト がダウンロードできます。
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毎週月曜日(休日の場合は開館)
展示替え期間(不定期)
年末年始期間(12月29日~1月3日)
ほか臨時休館することがあります。
午前9時30分~午後5時